発達障害ちゃんと赤ちゃん

37歳無職。ADHD。同い年の夫(双極性障害)と2歳3か月の息子と世田谷区に暮らす。わりといつも離婚5秒前。

精神医療の現場での患者家族の位置づけ

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明日は夫の主治医との面談です。

夫の病状が別居後にどんどん悪化していることに対する主治医の見解、今後の治療方針の確認、家族との接触を夫に禁止する理由の確認をしたいと思います。

そして、家族として転医を希望していること、研修医(夫の主治医は研修医らしい)として指導医の指示を仰いでほしいという希望を伝えたいと思います。

 

ストレスを軽減するために家族との接触を避けるようにと指導され、友達もいない、他人とのコミュニケーションが病的に苦手、精神病で降格された職場でも針の筵状態の夫が孤立して追い詰められるのではという想像は働かなかったのか?

 

仕事よりなにより大切してきた息子との関係を断絶され、しかし治療のためだと言われ、職場ではいないもののように扱われ、病気は悪化するばかり、相談する相手もいない、自己破産申請中でお金もない、そんな状態に追いやられた焦りと孤独と不安が想像できませんでしたか?と主治医に問いたい。

お薬を出すだけが仕事ですか?

患者から生きる気力を奪っても、患者がおとなしくしていれば治療としては成功ですか?

まあ、こんなことは口に出しませんが。

 

明日に備えて、精神疾患患者の家族支援についての一般的な知識でも仕入れておこうと思います。

引用した記事は、医療従事者向けのものですので、精神医療の現場での患者家族の位置づけがわかってよいです。

 

以下は、雑誌の特集を要約したものです。

アンダーラインは私が気になるところに引きました。

 

 

雑誌 『精神科臨床サービス』第4巻2号 2004年4月

 

■特集 これだけは知っておきたい―家族の力をどう生かすか

第1章 総論
  ●精神医療史の中における家族の位置づけ
白石弘巳


 これまでの精神科医療の歴史の中に現れた家族の立場のいくつかを取り上げ,その功罪について検討した。家族はまず精神障害者の監督者として規定された。その結果,家族は医療や保護を図る国の施策の実質的な担い手となり,ときに精神障害者本人と対立したり,また専門家から批判され,社会からも責任を問われる存在となった。また,一時期の遺伝や家庭環境に関する研究は,家族が発症の成因との印象を与え,社会の偏見や家族の自責感を助長させた可能性がある。1965年家族が「全国精神障害者家族会連合会」を組織し,当事者として声を上げたことにより,家族は徐々に支援を受ける対象として認知されるようになった。最後に,精神障害者本人が力をつけ,家族自体の構成人数や機能が変化した昨今,精神科医療は本人と家族の関係を適切に評価し,特に加害や被害の実態に即して被害者の支援という視点をもって臨むことが必要となってきていることを述べた。
キーワード:保護者,家族研究,家族会,感情表出,家族機能

  ●常識的家族療法 ――治療の中で家族の力をどう生かすか――
黒田章史 下坂幸三
 常識的家族療法は境界性パーソナリティー障害および,これと関連した障害である摂食障害不登校,ひきこもり,家庭内暴力などの,広い意味での行動化型の青年期患者を主な対象として,下坂により1980年代後半に開発された家族面接技法である。この治療法が家族面接を重視するのは,精神科以外であれば青年期の患者を診察する際に当然とされるような,家族を最も重要な治療資源と見做し,治療協力者と位置づけた上で病者の治療に関与させるという方針をこの治療法が採っていることに由来するものである。以上のような方針に基づいて,この治療法では境界例水準の青年期患者の病理について,そしてそれに対処するために必要とされる様々な技能について,家族面接を駆使しながら家族および患者自身に対して教示していく。本稿で筆者らはこの治療法の概略について治療構造および治療技法の両面から記載した上で,その具体的適用方法について詳述した。
キーワード:常識,確認,婉曲,家族面接,境界性パーソナリティー障害

  ●家族との情報交換のあり方――その法的・倫理的問題――
江畑敬介

精神保健・医療・福祉従事者には守秘義務が法律で規定されている一方では,患者の世話をしている家族に対する療養の指導の義務もあるため,ある種の患者情報をそれらの家族に提供する必要がある。

 この守秘義務と世話をしている家族への患者情報を伝達することの間には相克があり,精神保健・医療・精神保健・医療・福祉従事者には守秘義務が法律で規定されている一方では,患者の世話をしている家族に対する療養の指導の義務もあるため,ある種の患者情報をそれらの家族に提供する必要がある。福祉従事者の家族への患者情報の提供についての対応は多様であり大きな混乱が見られる。このような混乱は,諸外国においても見られることを文献上から明らかにした。そのことから,筆者らは家族への患者情報の提供に関する実践的指針の試案を提出した。
キーワード:守秘義務,患者情報,家族,療養指導,情報交換

  ●家族対応における職種の連携 ――多職種チームによる家族支援を通して――
稲井友理子
 精神障害者に対するケアサービスは地域ケアへと移行し,当事者が生活する家の中では家族が彼らの支援の一部を担っているといっても過言ではない。また,地域ケアをすすめていく上では医療・保健・福祉にわたる多職種支援が欠かせない。専門家は家族の立場に立って「疾病」や「障害」を理解し,家族メンバーが当事者支援を行えるように家族と共に行動する必要がある。家族は当事者にとって理解者であり一番身近な協力者である。彼らと共に専門家が当事者固有の治療・援助チームを形成し,家族を治療に巻き込み一緒にチームを作っていくチームケアは,一方では家族に対して過大な期待や責任を押し付けているのではないかと思われがちだが,むしろ当事者の一番の理解者として家族の持つ力を評価するものであり,専門家との共同作業を通して当事者を抱えて生活する家族自身をエンパワーメントすることにもつながっていく。
キーワード:多職種チーム,統合型地域精神科治療プログラム(OTP),家族支援,エンパワーメント

第2章 臨床場面による家族への対応技法
  ●精神科急性期治療病棟にて
五十嵐善雄
 急性期病棟を利用する患者は,統合失調症のみならずパニック障害から複雑性PTSDなど多岐にわたるようになってきた。精神科急性期治療病棟の3カ月という枠組みは,家族への対応を考えれば決して長い時間ではない。限られた時間の中で急性期を乗り越え,その後の長いリハビリテーションへの導入を視野にいれた継続的治療を行うためには,家族の同意を得ることはもちろんのこと,家族を支援者の一員として位置づけることは治療者に求められることである。その動機付けを強固なものにするために,入院前に家族のそれまでのホメオスタシスを改変して家族成員の1人である患者を抱えてきた状況に治療者は踏み込み,病気を抱えて生きる本人と家族成員それぞれの新たなアイデンティティの獲得にも配慮することが必要となる。家族が社会から取り入れた偏見を払拭するためにも,急性期病棟での治療はその橋渡しになることを自覚した関与でなければならないことを強調した。
キーワード:急性期,家族のホメオスタシスの改変,悲哀の仕事,家族教室,偏見

  ●家族看護は患者・家族・看護者の相互作用
八重美枝子 土床幸江 官澤浩志 沖田美佐子
 臨床現場では,患者に着目するだけで精一杯で,なかなか家族に十分な看護を提供できないでいる。一方,患者に多大な影響を及ぼす家族や,要求の多い家族に対してはネガティブな感情をもったりする。そこで,私達は,家族を重要な治療チームの一員として捉え,システム思考によって,家族をアセスメントし,介入を行っている。家族アセスメントは,家族の起こしている悪循環の円環パターンと,家族の持っている問題となる信念を発見し,家族自身がそれに気づくこと。介入のポイントは家族の能力を信じ,家族が自ら解決していけるように援助すること。そして,家族が新しい考え方・信念・行動を身に付けることを介入のゴールとしている。
キーワード:家族システム看護,家族アセスメントツール,パートナーシップ,エンパワーメント,傾聴

  デイケアでの家族支援の方法 ・・「日常的な個別的働きかけ」と,心理教育や家族会による「集団的支援」の統合・・
浅井久栄 柴田貴美子 岩崎さやか 伊藤哲司 田〓裕子 山崎修道 古川俊一
 デイケアにおける家族支援として,「日常的な個別的働きかけ」と「集団的支援」に分けて,筆者らの経験を紹介した。
デイケアでは,集団場面を治療的に運営して,メンバーの生活の特徴や再発にいたる病理を把握することが容易である。そして「日常的な個別的働きかけ」を重視して,家族とのきめ細かな連携を行う中で,再発を防ぐための働きかけが可能となる。
併せて心理教育や家族会などの家族グループを利用することで,一般的な知識情報の交換がなされ,感情の受容・共感があり,自責感から解放され,生活にゆとりが生まれる。自助グループへの参加は,家族が能動的に活動することでエンパワメントされる。
デイケアでの家族支援では「日常的な個別的働きかけ」と「集団的支援」を相補的に組み合わせることが必要と考える。
キーワード:統合失調症デイケア,家族支援,エンパワメント,家族グループ

  ●精神科クリニックにおける家族へのアプローチ ――家族面接の基本的な考え方――
楢林理一郎
 精神科クリニックは,その受診のしやすさから家族との触れあいも多い。患者のみならず家族への臨床的なアプローチは,精神科臨床の大切な領域である。しかし一方で,家族へのアプローチに時間を掛けることは医療制度上から来る現実的な制約も多い。
筆者は,精神科診療所における家族へのアプローチの現状を述べ,さらに家族療法的な考え方を背景とした家族へのアプローチの重要性を指摘し,その基本的スタンスについて述べた。すなわち,1)家族と丁寧に出会う,2)家族を責めない。家族原因説を採らない,3)家族の病気理解の文脈をたどる,4)病いについて最もよく知っているのは家族,5)家族間の交流パターンを見る,6)治療者をも含む交流パターンを考察することの大切さについて述べた。
キーワード:精神科診療所,家族療法,システム論,家族面接,語り


  ●保健所における家族支援技法
浅沼奈美 原綾子 柏木由美子
 保健所に持ち込まれる相談は,未治療・治療中断の相談が多く,第1相談者の約6割は家族である。家族支援のポイントは,(1)家族の生活の歴史を知り家族の思いを受け止める,(2)家族関係を調整しつつ,家族が問題に向き合う力を見極める,(3)本人や家族の生活や問題行動の的確なアセスメントを家族と共有し現実への対応を示す,(4)揺れる家族に付き合い,受診に至るプロセスを共に歩く,(5)本人と家族の成長を支援する等,相談の緊急性を見極め,対処方法を判断する力量が求められる。特に未治療・治療中断の相談は,家族以外の地域の様々な状況から圧力が加わり,保健師の感情が不安,焦り等で「ゆらぎ」やすく,保健師自身の感情にしっかり向き合うことが要求される。地域においては,本人や家族との関係を構築し,医療の継続と地域生活を支える息の長い,継続した働きかけや支援を地域の資源とネットワークを生かして行っていく必要がある。
キーワード:保健所,保健師,地域,未治療,治療中断

  ●痴呆性高齢者を抱える家族へのアプローチ
東儀瑞穂 工藤サツ 入谷修司
 与えられた課題は,精神保健福祉センターの立場から臨床場面における家族への対応技法を論じることである。筆者は東京都の老人性痴呆疾患専門医療事業の主に訪問業務に携わっているため,本稿ではその訪問業務の紹介と,訪問活動を通して関わった事例を提示し日々の活動で行っているアプローチをまとめた。
高齢者精神医療相談班(以下,高齢者班)は,東京都独自の事業に従い地域保健師の依頼で痴呆患者の居宅等に訪問して患者・家族らと面接し地域関係機関を援助している。高齢者班のアプローチにより,家族には少なくとも妥当な方向付けがなされること,保健所等においては地域のマネージメント能力が高まることが期待できる。しかし本稿で示すアプローチが有効な対応技法となるためには,我々自身がその有効性と妥当性を検証し更に効果あるスキルを確立する必要がある。それはまた現場から要請されていることであろう。
キーワード:痴呆,家族,地域保健師,老人性痴呆疾患病棟,高齢者精神医療相談班

  ●地域における社会復帰施設の利用者と 家族に対する支援について
上野容子
 生活支援における家族への対応は,家族の生活状況を充分把握し,問題を解決していきながら,そこにとどまるのではなく,家族のひとりひとりが主体的に生活していくことができるような対応が重要であると考えている。社会復帰施設は地域社会にあり,地域住民のニーズに応えていくことが求められている。精神障害者もその家族も地域の一住民である。障害者とその家族の立場だけでなく,地域で生活していく住民として,他の住民達と共に相互支援関係を築いて生活していけるように支援していきたい。
キーワード:社会復帰施設,家族,地域生活支援センター,生活支援,主体性

  ●児童相談センターにおける家族面接
岡田隆
 相談の当事者でありながら問題の当事者ではない,というスタンスの家族を対象に面接を行うことが児童相談センターにおける家族面接の大きな特徴といえる。家族は,<不安>だけでなく,自分なりの問題理解である<自説>と,そこから導かれた<対応>を携えて登場する。この3つの要素は,問題を維持させる上で重要な役割を果たしている。
< 自説><対応><不安>の扱いをめぐって,筆者は3通りの面接を念頭に置いている。それは,<自説>を治療者側の<仮説>で置き換えて新しい<対応>を提案する面接と,<自説>の骨組みだけ変えて<対応>は全く変えないという面接と,<自説>や<対応>の内容よりもそれを語る言葉に注意を向けてその影響や背景を尋ねる面接である。
筆者は,発達障害適応障害精神疾患などの相談内容に応じて,最も適切と思われる道筋をその中から選択するようにしている。
キーワード:説,対応,不安,緊張,緩和

第3章 特別な家族状況への対応
  ●「家族の力」とは何か――家族代理者という命名から考える――
信田さよ子
 もっとも援助希求動機の高いひとは「困る」と感じているひとである。この主観的契機をもつひとが家族であるとは限らない。家族代理者であっても困っているひとは,家族であってその契機をもたないひとより,有効な援助協力者になりうるだろう。その点で援助者も家族代理者のひとりでありうる。家族という枠を超えた援助協力者をいかに見出していくかが今後の家族変容に対応した援助者のありかたであろう。
キーワード:アディクションアプローチ,非医療モデル,主観的契機,家族代理者,援助協力者

  統合失調症難治例への家族史的家族療法
伊勢田
 筆者らは統合失調症(精神分裂病)難治例への治療技法の1つとして,家族史的家族療法を試みている。患者の長期にわたる生活破綻の要因を数世代の家族史の文脈で捉え直し,問題の新たな解決策を探り,治療と生活支援のために協働型家族運営の援助を目指す。そのために,特定のキーパーソンだけに頼らず,家族みんなの力を引き出し,のけ者をつくらない家族運営の実現に留意した。
キーワード:統合失調症(精神分裂病),難治例,家族療法,数世代にわたる家族史,協働型家族運営

  ●複数の患者さんがいる家族の場合
原田雅典 岡崎祐士
 本稿は複数の家族メンバーが患者となり,家族が崩壊の危機に縦した事例をとりあげて,いわゆる「多問題家族」に対する治療・援助に言及したものである。このような家族は,医療場面で設定され構造化される家族療法・支援以前に,生活そのものの再建が不可欠である場合が多く,生活の場に踏み込んだ包括的な援助が求められる。ここでは生活の場における援助の組織化や,医療と生活の場における援助の統合などを,実際の事例に即して報告した。また家族崩壊に直面した家族であっても,家族の内部には家族再建に向かおうとする健康な力が秘められていることや,治療者側からは見えにくい血縁・地縁についてもふれた。家族の自己回復力は,このような家族の健康な機能の理解や適切な援助的介入によって引き出される。
キーワード:家族支援,多問題家族,生活の場での援助,包括的援助体制,健康な家族機能

  ●家族のみが受診する場合
吉川悟
 「家族のみが受診する」という相談は,精神医学の前提である「クライエントへの援助」と一致しないものとして捉えられがちである。しかし,個人精神療法の視点ではなく,システム論的家族療法の視点を導入することによって,家族だけを対象としたクライエントへの援助が可能である。家族をシステムとして捉え,そこで起こっているコミュニケーション・パターンに変化を導入することによって,家族だけを対象とした治療が可能である。そのためには,ジョイニングを重視し,家族との治療関係を良好にすることが不可欠である。そして,治療者が「情報収集→仮説設定→働きかけ→再び情報収集」という循環を行うことで,家族システムのコミュニケーション・パターンに変化をもたらすことが求められる。
キーワード:家族,システム論的家族療法(家族療法),ジョイニング,コミュニケーション・パターン,状況と文脈

  ●婚約者への対応に影響を与える因子
市来真彦
 精神医療において本人および援助者が心理教育を受けて,病気を正しく理解することは精神的にも経済的にも得られる利点が多い。わが国においても心理教育の重要性に対する認識が年々高まっているが,すべての援助者に一律に情報を伝えればよいというものでもない。援助者のうち婚約者は,配偶者となった後はキーパーソンとなるが,現在の立場では保護者の役割を担うことは出来ず,また情報提供のいかんによっては今後の本人との関係に大きな影響を与えるため,婚約者に対する対応には十分な配慮が必要である。疾患や本人のおかれている状況などが個々で異なるため,婚約者に対する特有の定型的な対応マニュアルを作成することは困難であるが,本稿では婚約者への対応に影響を与える代表的な因子を5項目挙げ,個別にコメントを加えてみたい。
キーワード:精神疾患,婚約者,心理教育,早期介入

第4章 対応に工夫を要する家族
  ●家族間で治療についての意見が一致しない場合
三輪健一
 統合失調症の事例を通して,家族間で異なる意見をどのように扱うかを検討した。この事例では初診時から離婚の話が出ており,姑,義妹,実母,夫が登場し意見は交錯した。治療を進めていく際に,それぞれの意見を尊重しながらも,誰を中心に進めていくかは重要である。破綻するところにまで至ってしまった事態に対する見解は家族間で大きく異なる。それぞれの家族が合意できる回復への道筋を創り出していく必要がある。
キーワード:精神障害者の社会的復権,支援技法,コラボレーション(協働),ボランティア養成,スーパービジョン

  ●家族が病気を受け入れない場合
上ノ山一寛
 家族の一員が重い病気や障害を受けた場合,他の家族がそれを受け入れていくことは簡単なことではない。いわゆる「家族の無理解」や「抵抗」や「ノンコンプライアンス」と見えるものは,患者・家族の属性と見るよりも,治療者や社会との関係性の中で見ていくべきと考える。患者・家族の生活している社会文化的な背景への感受性を豊かに持っていたい。患者・家族の満足度をチェックするなど,患者・家族の意見を取り入れる回路を確保しながら,不安感や猜疑心を払拭する努力をする必要がある。
キーワード:家族システム、抵抗、ノンコンプライアンス、病気の意味,満足度調査

  ●家族の支援を得られない患者への援助
平岡久仁子
 家族の支援を得られない患者への援助過程を示して,患者の自立を支援する視点の重要性と,家族を支援する地域機関との連携の在り方を考察した。
そして,治療初期から心理社会的援助を視野に入れてチームアプローチを考慮すること,セルフヘルプグループの育成,家族会活動の充実などをこれからの課題として示した。
キーワード:家族関係の変化,自立支援,自己決定,心理社会的援助

  ●家族が患者に振り回されている場合
下山千景
 家族が振り回されている状態を「家族が自己犠牲,献身的行動を勝手に中断できない関係性に陥っているもの」とした。常軌を逸した状態を生む激しい行動化は,症例の社会機能の低さからくる不適応症状と考え,関係機関が連携してその機能に見合った環境設定を行うことで対処していくべきであり,家族にはその共同治療者として元来のエネルギーや保護機能を発揮していく様援助すべきである事を指摘した。
キーワード:振り回されている家族

  ●患者が家族への連絡を拒否する場合
恩田禎
 患者とわれわれ精神科医は,消費者とそのサービサーの関係にある。サービサーは一般に,消費者のニーズにこたえ,またそのベネフィットを享受してもらうことを求められる。しかし,精神科医療においては,ニーズとベネフィットを両立させられない場合がある。 この際,医師には守秘義務があり,正当な理由がなければ,患者が家族に連絡を拒否した場合,原則としてその要望,ニーズに従わなくてはならない。しかし,ベネフィットが優先されると判断される場合,躊躇することなく,家族への連絡を取るべきである
キーワード:患者のニーズ,患者のベネフィット,守秘義務

  ●家族が「回復・退院したら離婚する」という場合
五味隆志
 家族,配偶者の側が,「退院したら離婚する」という場合には,そうするだけの十分すぎる事情,十分すぎる経緯があると想像できる。本当に離婚するつもりの配偶者は,外来治療においても入院治療においても,治療スタッフに何も言わずにさっさと離婚する。「回復・退院したら離婚する」という家族は患者に対しても無関心なのではなく,ある意味で患者に対し関心を持ち,医療に対してある種の要求を持っていて,治療スタッフのアプローチの仕方によっては,患者の退院や外来治療に納得して,協力してくれる可能性がある。そのためには,治療スタッフの側で患者の家族,配偶者の要求について十分に耳を傾け,家族,配偶者に過度の負担がかからないように,具体的な対策をとる必要があるだろう。家族が負担に感じる点について,患者ともよく話し合い,必要に応じて患者および家族と同席で面接し,双方の言い分を傾聴し,調整することが必要になってくる。
キーワード:精神科治療,家族調整,離婚,家族,配偶者

  ●遠くに住む高齢者をケアする家族への支援
松本一生
 遠く離れて暮らす高齢者を遠距離介護で支えている家族の風景が昨今では珍しくない。本稿で対象とした気分変調症は大うつ病のような激しさがないことが介護保険制度などの支援を受けにくくしており,むしろ家族に負担が集中する。遠距離介護を無理なく続けるためには家族が自らの限界を認識していることが大切である。家族だけの介護にこだわらず支援者にゆだねる決断が求められる。また,「地域」で高齢者を支えるのが原則であるが,地域という言葉が必ずしも近隣を意味するのではない。距離の近さより,介護者が信頼感を持って支援をゆだねられるか否かが地域支援に大切な要因である。
キーワード:高齢者,遠距離介護,気分変調症,地域,家族支援

  ●家庭内で暴力のある場合
中村伸一
 わが国において従来,家庭内での暴力は,比較的容認される傾向にあったが,児童虐待への注目やDV防止法の制定などに伴い決して許されるものでないという認識が広まったのは,近年の大きな社会進歩である。家庭内での暴力にどのように対応するかという極めて広範で漠然としたこの課題に,筆者としては,重大な身体的危害や精神的障害をこうむる代表的な事態を取り上げるにとどめることにした。それらは,いわゆる「家庭内暴力」,「児童虐待」そして「ドメスティク・バイオレンス(DV)」である。特にDVにおいては,通常,心理的さらに経済的虐待(暴力)も含まれ,さらに児童虐待ではネグレクトも含まれるわけだが,本稿では,暴力への対応を身体的なものに限って論じ,これら心理的および経済的な暴力は除外する。また,老人への暴力は筆者の臨床経験が少ないため割愛する。いずれにしても身体的暴力は「傷害」であり,究極的には警察や保健所,児童相談所家庭裁判所,弁護士などを通じて法に基づいて裁かれるはずの事態である。
キーワード:家庭内暴力児童虐待ドメスティック・バイオレンス(DV)

  ●家族が治療の場に宗教を持ち込む場合
高橋紳吾
 治療と宗教とはもともと密接な関係にある。とくに未分化な呪術的宗教では病気治しは最重要課題だったが,それを受け継いでいるのがいわゆるカルト宗教で,現代医学としばしば医療現場で衝突を起こす。精神科領域では主に神経症領域の患者たちがその犠牲になりうるが,現代カルトは統合失調症などの精神病に対しては手を出さない。ただし広い意味での宗教のうち,〓瞑想や自己開発セミナーは安定期にある統合失調症の患者にとっても危険である。 家族が精神科治療の場に宗教を持ち込むということは現代では稀になってきているが,その場合には,背景にある家族の心理に注目する必要がある。というのは,患者の治療のために宗教を持ちだすというよりも,家族が患者の介護に疲労し,しばしば絶望的となっており,そこからの救済を宗教に求めているからで,事例に即した家族へのこころのケアが治療者に求められていると考えるべきだからである。
キーワード:宗教,カルト,治療,統合失調症

  ●家族が医療関係者の場合
坂口正道
 社会資源としての「家族」とりわけ医療関係者の精神科治療への活用について述べた。ここではこうした「関係者」が,いわゆるキーパーソンや保護者としてではなく,家族の一員であるとともに,いかに治療者側のパートナーとなりうるかが重要であると思われた。それは家族の一員としての負い目感情を減少し,かつ医療従事者としての立場を有用にする可能性があるからである。そうした関係者と治療者との関係では,医療チームとしての複数対応の意義や,個々の関係者に対する配慮が重要である。その点で,こうした関係者が患者やその家族にとって,治療者側との関係では「斜め的」に立つことによって得られる治療状況が,病名告知やインフォームド・コンセントに関する課題に対して有意であることを強調した。
キーワード:医療関係者,キーパーソン,告知と説明,チーム対応,「斜め的」関係

第5章 家族・家族会との上手な付き合い方
  ●家族の立場から
池末美穂子
 関係職員には家族や家族会に過剰な期待と役割を課するのではなく,家族の気持ちや生活を尊重する視点が必要である。発病時・治療開始時の若い年代の親に必要な学習の機会が乏しいのが現実で,その時期の親に向き合う医療関係者の役割の中には,回復のプロセスと社会的支援へ移行するイメージを描けるような援助が必要になってくる。また,日本において,高齢の親の人生が子への気遣いと介護に明け暮れている現実を踏まえ,それを知りながら関係職員がなお「頑張って」と言い続けてきた時代を終わらせる時期にきていることを強調している。最後に,2つのことを問題提起としている。1つ目は,親にとって思春期・青年期に発症する精神疾患・障害の受容は極めて難しいということ,2つ目は,新年に入り急展開している介護保険統合化への論議においても,家族に対して過剰な役割を二度と課せないという確認が必要であるということである。
キーワード:発病時・治療開始時の家族援助,家族も支援ネットワークの一員,疾患・障害受容の難しさ,緊張感からの解放,子を託していける社会

  ●相手の立場に立つことは当たり前のことのようで難しい ――家族・家族会との上手な関わり方 専門職の立場から――
三野善央
 専門職の立場から,家族,家族会との関わりについて,「相手の立場に立つ」との観点からまとめた。家族会の発展を助力することが,精神保健福祉サービスの向上につながることを述べた。また,家族心理教育を例に挙げ,家族の立場に立った場合に有益な情報と現在行われている家族教育の内容との間にずれが生じている可能性があること,このずれは統合失調症の本質を見誤っているためではないかとの疑義を呈した。さらに,教育後の援助に関しても論じた。

 

困ってらっしゃる方のご参考になれば。