発達障害ちゃんと赤ちゃん

ADHDのこと、夫のこと、息子のこと、実家のこと。

父の呪い①

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インフルエンザの高熱で夢うつつだった先日、父の夢をみました。

おそらく父の夢を見るなんて初めてのことです。

私と父は仲が良くありません。

仲が良くないどころか、物心ついた頃にはもう父を疎ましいと思っていた記憶があります。

父は私に甘いのに。

なぜそんなに?

父は母のように私を虐待したり、意地悪をするわけではないのに。

 

夢の中で父は、祖父を殺していました。

そして、ああしまったな。面倒なことになったなとイラついていました。

そして庭に穴を掘りました。

祖父が大切にしている松の根元に。

穴に祖父の死体を入れました。

私に「お前もそこに入れ」といいました。

私は躊躇なく穴にストンと落ちました。

湿った土の匂いがして、祖父の身体はまだ温かくて、なぜか、もうこれで大丈夫、と思いました。

祖父の痩せた胸に頬を寄せました。

痩せた皮膚と骨の感触を目をつぶって味わいました。

夢の中なのに、せっかく夢の中なのに、祖父はもう20年も前に死んでしまったことに気が付いてしまったので、せめて感触を味わいたいと思ったのです。

私の脳にまだ残っている病んだ祖父の身体の感触、その体温を頬を擦り付けるようにして味わいました。

ああ、おじいちゃん

おじいちゃん

私だよ

会いたいよ

一人にしないで

 

涙が耳に入る感触で起きました。

真夜中です。

息子が隣で健やかな寝息を立てています。

身体が熱くて頭がすごく痛い。

熱で体が一回り膨らんだような不思議な感じ。

目を覚ました途端に、さっきまで精彩だった祖父の身体の感触がおぼろげになります。

夢だから仕方ないけれど、さみしくて目を閉じて夢の断片を集めてみます。

 

祖父は私が大学に入学したばかりの頃に癌でなくなりました。

もう手術では取り切れない、後は緩和病棟にいって痛みを抑えましょうという段階の祖父に、父がどうしても手術をしてほしいと医師を説得して、その手術の後すぐに祖父は亡くなりました。

祖父に癌の告知はしていませんでした。

決定権は父にありました。

父は医療従事者です。

父にはわかっていたはずです。

 

父は今まさに息を引き取ろうとする祖父が水を欲しがり、祖母が水を飲ませようと濡れたハンカチを口に持って行こうとするのを「よけいなことをするな」と止め、次の瞬間に祖父は意識を失い、しばらくして亡くなりました。

あの時の祖父の信じられないと絶望した顔は今もはっきり覚えています。

私はずっと祖父の手を握っていて、父はそれを「ドラマみたいなことすんな恥ずかしい」と言いましたが、祖父は話せなくなっても私の手をぎゅうぎゅうと力強く握ってくれていたので、私は手を握っていました。

祖父の魂が体から抜けるまでずっと。

 

父は祖父が亡くなった次の月に自宅を取り壊し、マンションを買い、建築家を呼び、半年後には新しい家が建ちました。

祖父の遺産でした。

平屋の日本家屋は悪趣味な南仏風の3階建て住宅になり、広い庭の半分は駐車場になり、苔むした裏庭も、金木犀の木も、立派な松の木も、毎年春を告げてくれていた良い香りのする梅の木も、蘇鉄もツツジも鶏頭も全てショベルカーが掘り返され、どこかに棄てられてしまいました。

狭くなった庭には、母の趣味で作られた薔薇のアーチ、レンガの花壇、置かれた7人の小人の人形がおりました。

ばかみたい。

勝手にすればいいけど、ばかみたい。

 

②に続きます。