発達障害のことと家族のこと

39歳。ADHD診断済み。4歳の息子と猫2匹と暮らす。同い年の夫と別居中。

喋れなくなった日

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弟の四十九日の法要のために実家に帰省してました。

特に何とされたとか、何があったわけではないのに、帰宅してから数日はなんだかうまく喋れずにいました。

舌が回らない、言葉が出てこない、詰まる。

 

実家から帰宅した日、息子に絵本を読んでいてもどもってしまってうまく読めません。

 

私は読み聞かせが好きで、図書館で働いていた頃は図書館での読み聞かせだけに飽き足らず、休日に読み聞かせのボランティアをして読み聞かせの腕を磨いていたくらいなので、普段なら読み聞かせの最中に言葉に詰まるのとなんてないのに。

疲れてるのかなと思いました。

 

次の日、取引先の人から電話がかかってきたので出ました。

あれ?

口がぱくぱくするだけで言葉が出てきません。

きちんと話さなくてはと思うと焦って余計にうまく話せず、どうにか絞り出すように相槌だけ打ちました。

どうしたんだろう?

うまく喋れない。

 

息子とは普通に話せましたが、彼が何か言うとその声にひどくイライラしました。

いつもはかわいい息子の声が耳について不快なのです。

私を呼ばないで、話しかけないで、口を開きたくないの、喋りたくないの、疲れてるの、そんな風に思っている自分に罪悪感を感じて余計に口がうまく開けなくてなりました。

息子には申し訳ないのですが「お母さん少し体の具合が悪くてお話ができないの。明日になったら元気になるから元気になったらたくさんお話ししようね」と話しました。

彼は「ふーん、わかったよ」と言って、私をそっとしておいてくれました。

 

午後近くなって夫も一緒に家族で大きな公園に出かけました。

うまく喋れず、表情も硬い。

お弁当を作る元気なんてもちろんなく、のろのろと麦茶を水筒に入れて公園に向かいました。

 

暑い日で、途中で息子の帽子を忘れたことに気づいて取りに戻ったら、汗だくで、もう疲れきってしまって、もう全部が全部嫌になりました。

鏡を見ると疲れた顔をした中年女が汗だくでこちらを見ています。

額に張り付いた髪。

そこだけ場違いにキラキラ光るブルートパーズのペンダント。

なんて顔。

醜い。

かわいそう。

苦しい。

息がつまる。

 

衝動的にブルートパーズのネックレスを引きちぎりました。

 

弟はなんで死んだの?

洗面台に落ちた青い石はとてもきれい。

弟はなんで死んだんだろう。

なんで?

死んだの?

死んだの?

死んだ?

なんで?

青い石。

きれい。

 

息子の帽子を持って公園に戻りテントを張っていると夫が来ました。

 

歩く夫を見て、夫は生きてるうれしいと思いました。

 

 

公園の樹々は新緑が美しく匂い立つようです。

3人で小さなテントに入りました。

夫はいつも私が話しかけないと自分からは私に話しかけません。

何でもない話をして笑いました。

テントの中でごろりと寝そべると樹々と木漏れ日と芝生しか見えません。

きれい。

きれいな緑。

 

夫が息子を連れて遊びに行ってくれたので、仰向けに寝そべり目を閉じました。

いいお天気。

いいお天気だよ○○と弟の名前を口に出してみました。

本当に死んだの?

どこにもいないの?

なんで?

最後に見た時、笑ってたのに。あの日もいいお天気であなた笑ってたのに。

いいお天気。

私もいつかいなくなるんだな。

死ぬってどんなんなんだろう。

いいお天気。

涙がどんどん出てくる。

 

夫と息子が戻って来て、私が好きな喫茶店にみんなで行きました。

息子が眠ってしまったので、夫とボソボソと話をしながら野菜炒め定食とあんみつを食べている途中で、あれ?私喋れてる?と気がついたのです。

「私、弟のことがあって4キロも痩せたんだよ」

あ、普通に喋れてる。

詰まってない、どもってない。

 

夫の話す言葉は感情的にでなく限りなくフラットで、私は練習みたいに息子のこと、弟の葬儀のこと、痩せたことなんかをポツリとポツリと話しました。

 

次の日も喋れました。

その次の日も。

 

喋れなくなった日は終わったようでした。